誠-巡る時、幕末の鐘-



「おい、左之。どうするよ」


「どうするったって。何にも考えずについて来たからな」




二人はその場で腕を組み、考えこんでしまった。


困ったのは隊士達だ。




「よし、分かった!!」




永倉が何か閃いたのか、大きな声で叫んだ。




「どうすんだ?」


「奏の行く所を今日の巡察の道に変更すればいいじゃねぇか」


「なるほど」




原田も同意し、今日の巡察の道は決まった。




「なら行こうぜ!!」




永倉が奏の行った方を見ると、一人の少女が立っていた。




「ねぇ。あなた達、壬生浪の方?」




少女、いや少年である珠樹だ。


いきなり現れたこともさることながら、奏と本当にそっくりなことにその場にいた者全員が驚いた。


隊士達は事情を知らないので本当に驚いている。


だが、永倉と原田はすぐに表情を厳しくした。




「新八。こいつだぜ」


「あぁ。お前らは屯所に戻れ」




二人は隊士達に帰還を命じた。


隊士達は突然のことに狼狽えながらも、二人の厳しい表情に気圧され、素直に従った。



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