誠-巡る時、幕末の鐘-
―――市中
「お前達、この頃どこへ行ってたんだ?調伏されたかと思ったぞ」
雑鬼達の気配がこの一週間程感じられなかった。
この時代にも、陰陽師やら力を持つ法師はいる。
奏とて、何も知らないその者達からすれば、ただの鬼と認識される。
実際二度程、危うい目にあったことがある。
随分と昔のことだが。
「なんかな」
「変な奴等が」
「来たんだよ」
雑鬼達が順番に言葉を繋げる。
はたから見れば、奏一人が話しているように見えるだろうが問題無い。
ここは雑木林の中だ。
あまり人通りが少ない場所を選んだのだ。
「姿が見えないんだよ」
「元老院の新参者でもないみたいだったし」
「鴉天狗に聞こうと思ったけど、あいつもいないし」
「だからしばらく都を離れてた」
「だってお前も寝込んでただろ?」
「その間に何かあったら怖いじゃんか」
雑鬼達は口々に言い募る。
京を離れていた判断は正しいだろう。
鴉天狗である鷹も今はミエの仕事の手伝いでいない。