誠-巡る時、幕末の鐘-



「お前達、もっと詳しくそいつらのこと言ってみろ」




一つのことを思い出し、まさかと思って聞いてみた。




「姿が見えなくて」


「姿っていうのは本当に姿なのか?」




奏が半眼で訝しげに尋ねた。


すると予想していた通りの言葉が返ってきた。




「本性のことだぜ?」


「人の姿してるのに、人じゃないんだもんなぁ」


「……やっぱりか」




姿というと雑鬼達の間では、その本来の姿、つまり本性ということを指すらしい。


その事をすっかり失念していた。




「それにな」


「おかしなことに」


「お前と」


「同じ顔だったぜ?」


「二人のうち一人がな」




雑鬼達の口からポンポンと重要なことが明かされた。




「それを一番先に言え!!」




奏が雑鬼達に怒鳴ると、彼らは口を揃えて言った。




『だって聞かれなかったから!!』




思わず九字を切って、調伏しそうになるのをなんとかこらえた。


鬼が九字を切るなんて聞いたこともないが。



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