誠-巡る時、幕末の鐘-
「……まさか、そんなはずはない」
奏は髪をかきあげ、顔を歪めている。
「お前の兄妹なんじゃないのか?」
「なら何故京から離れた」
「だってそいつら、ヤバい感じがしたんだよ」
「……ヤバい感じ?」
眉根を寄せ、再び考えこんだ。
おかげで後ろから誰かが来る音に反応するのが遅れた。
気付いた時にはもう、すぐ近くだった。
後ろを振り向かずに刀に手を伸ばす。
足音がすぐ近くで止まった。
「奏さん」
ゆっくり振り向くと、珠樹の姿があった。
雑鬼達が震え始めた。
集まって体を寄せあっている。
「お、おい」
「こいつだぜ」
「あ、あと一人いないけど」
雑鬼達の言葉に、珠樹はニコリと笑った。
「おしゃべりな方達ですね」
奏は確信した。
珠樹が二人のうちの一人だと。
雑鬼達の言葉を信用していないわけではない。
珠樹には見えないはずの雑鬼達が見えている。
それが決定打だ。