誠-巡る時、幕末の鐘-
「お行きなさい。あなた達がいては邪魔です」
口元に笑みを浮かべたまま、雑鬼達に冷徹な視線を送った。
雑鬼達は恐怖で動けずにいる。
「お前達、何してる。さっさとここから離れろ。いいか?誰にも言うな」
奏が雑鬼達の背中をポンっと叩くと、心配そうにしながらも雑木林から離れていく。
途中何度も振り返りながら駆けていった。
「さて。邪魔はようやくいなくなりましたね」
珠樹が先程までとはうって変わり、視線が柔らかくなった。
対する奏は一層厳しい視線を珠樹にぶつける。
「珠樹さん?一体、あなたは誰ですか?」
「奏、本当に僕のこと忘れた?」
気付くと、奏はフワリと珠樹に抱き締められていた。
耳元で珠樹が苦しそうに呟く。
言葉使いも呼び方も変わっている。
奏はバッと身を翻し、その腕から逃れた。
「私はあなたを知らない。…何故あなたは私を知っているの?」
奏は刀を抜き、刃先を珠樹にあてながら珠樹を睨んだ。
目の前には、確かに自分と似た顔がある。