誠-巡る時、幕末の鐘-
「う、そよ。だって……そう、あなたの言う彼方という人が本当に私の言う兄様か分からないし」
「雷焔彼方。雷焔一族の当主の息子。違う?これでもそう言い切れる?」
珠樹の続けざまの言葉に、もう何も言えなかった。
二人は同じ人物を言っている。
信じたくないが、信じなければいけない事実が目の前に横たわった。
「兄様が……兄様じゃ、ない?爺はそんなこと、一言も」
「僕達には知らされないように父様が根回しをしたんだよ」
頭蓋を雷が落ちたように何かが走った。
今まで信じていたものが、ガラガラと音を立てて崩れていく。
「じゃあ、私とあなたは……」
奏が言いかけた時、新たな気配が近くに現れた。
反射的に、奏は刀を構え直した。
珠樹もそちらを睨んでいる。