誠-巡る時、幕末の鐘-
「奏。落ち着きなさい」
スッと刀を奪われてしまった。
ごく自然に。
だが、奏はそれどころではなかった。
「ねぇ!!どういうこと!?」
必死に彼方の顔を見上げ、着物を揺する。
珠樹はその姿を黙って見つめていた。
「その前に珠樹の記憶を戻してあげたら?」
彼方が珠樹の方を指差した。
珠樹は彼方を鋭く睨んだ。
「記憶?……だって…」
「奏は夢を見ない?誰かと一緒にいる夢を」
彼方が優しく問いかける。
その言葉には確信的なものがあった。
「夢……ある。あれは……痛っ!!」
奏の頭を激痛が走った。
思わずしゃがみこんでしまった。
「奏!!」
珠樹が一目散に駆け寄ってくる。
肩に手を置き、彼方を睨んだ。
「兄上!!なんて無茶を!!」
「だけど、そうでもしないと奏は思い出せないよ?記憶を封じたのは、奏自身なんだから」
「だけど!!」
珠樹はギリッと歯を噛みしめた。
瞳には、明らかに怒りの色が見てとれる。