誠-巡る時、幕末の鐘-
「……私の横には、いつも誰かがいてくれた」
奏の呟きに、珠樹は眉を下げ、不安そうにしている。
奏は俯いたまま言葉を続けた。
「私達は……二人で一人だもの」
それは奏が小さい頃よく言っていた口癖だった。
珠樹の瞳が期待に輝く。
「だって……私達、双子の半身だから」
奏が頭を押さえていた両手を下ろし、肩に乗せられた珠樹の手に手を重ねた。
「でしょ?……珠樹」
奏が珠樹の方を振り返り、満面の笑みを見せた。
珠樹の目にはうっすらと涙が溜まっている。
ついに、ホロリと一滴流れた。
それを奏は手で優しく拭いさった。
「お帰り、珠樹。随分探したんだよ」
「……それはこっちの台詞」
珠樹が奏に抱きついた。
奏もしっかりと腕を珠樹の背中に回した。