誠-巡る時、幕末の鐘-



久方ぶりの再会。


数えきれるだけで七千年。


少なくとも、奏がローゼンクロイツ・天宮に保護されてからそれだけ経っている。


そしてそれ以上に珠樹とは小さい頃に離れていた。




「いきなり姿を消しちゃうから記憶を封じちゃったんだよ?」


「うん、ごめん。僕だって離れたくなかったんだ」




二人は一層きつく抱きしめあった。


お互いの温もりを感じて眠りについていたあの頃を思い出すように。




「……もういいかな?」




いささか不機嫌な声が感動の雰囲気に割り込んできた。




「兄上、邪魔しないでくれない?」


「聞きたいことがあるんだから、奏は」




奏は腕をとき、彼方と対峙した。




「兄様。全てを教えて」




静かに、だが固い決意が混じる声音を出した。


彼方は黙って頷いた。



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