誠-巡る時、幕末の鐘-
だが、相変わらず土方の顔は険しい。
「それがいつ落ちたのか分からねぇんだぞ?現に奏はここにはいねぇ」
みんなはまた暗くなってしまった。
この時程、自分の無力さを痛感したことはなかった。
サアッと風が吹き荒れ、葉が舞った。
「おいおい。お手上げか?」
「所詮ただの人間。指を加えて待つしかできないんだからな」
そこには、風戸の当主である風戸紫翠と、その側近である鈴がいた。
「てめぇらが裏で糸引いてたのか!!?」
「奏ちゃんは僕達のものなんだけど?」
沖田達はすでに刀を抜いている。
一気に場の空気が緊張した。
さっきまで僅かに聞こえていた鳥の鳴き声も聞こえなくなった。
「フン。今回、俺達は何もしていない」
「どういうことだ?」
厳しい声で尋ねる土方に、まぁまぁといった風に鈴が宥めた。