誠-巡る時、幕末の鐘-



「本当に今回は違う」


「いずれは返してもらうがな」


「てめぇ」




土方が殺気を飛ばした。


だが、当の紫翠はどこ吹く風状態だ。




「紫翠。お前は黙ってろ。俺達は奏がどこにいるか知っている」


『なに!!?』




鈴の言葉にみんなが反応した。


だが、瞳には疑いの光も滲ませている。




「嘘じゃないぜ?だが、条件がある」


「条件?」


「それをのんでくれさえすれば、奏の元に連れていってやる」




鈴はニヤリと笑った。


考えていることが全く読めない笑みだ。




「土方さん、どうすんだよ」


「罠ってことも考えられますよ?」


「それはねぇよ」




小声で話していたのに聞こえていたようだ。


鈴が答えた。




「俺的にはお前達、結構気に入ってんだぜ?」




敵側のくせにこんな事まで言ってのけた。




「……条件を話せ」


「そうこなくっちゃ!!」




土方は警戒を解かずに、胡乱げな目をしている。


だが鈴は指を鳴らし、上機嫌だ。


主である紫翠は、切り株を見つけ、煙管に火種をいれていた。



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