誠-巡る時、幕末の鐘-
変わらぬ真実
―――とある屋敷
奏は離れに通されていた。
「彼方様と珠樹様が雷焔の姫を見つけて連れて来られたぞ」
「紫翠様と鈴様はどちらに行かれた?」
「分からぬ」
「その方ら、探して参れ!!」
『はい!!』
襖の向こうで、たくさんの気配が右往左往しているのが分かる。
出てきた名前からここが誰の屋敷なのかも。
「兄様、珠樹。これは一体どういうこと?」
「……奏…」
ここに来るまではあんなにしっかり握っていた手も、今は伸ばしても届かない位置にある。
いや、奏が近寄らせないのだ、珠樹でさえ。
珠樹はそれが何より悲しかった。
「まさかとは思うけど……雷焔の里を裏切ったの?」
奏の目が剣呑に煌めく。
その瞳には、様々な感情がごちゃ混ぜになっていた。
「僕は!!……僕は違う」
奏に冷たい視線を向けられるのがどうしても我慢できなかった。
珠樹は唇を噛みしめ、横に首をそらした。