誠-巡る時、幕末の鐘-
そのまま自分が雷焔の里から消えた理由を続けた。
「双子は災いの元になるから、一人よこせって風戸の年長者達が言ってきたんだ」
奏は黙って話に耳を傾けた。
彼方も目を軽く伏せるだけで、口を挟まなかった。
「父様達は、将来雷焔に帰れる可能性がある僕の方を選んだんだ」
奏は女鬼だから、と悲しげに奏を見た。
「そして、当主交代で紫翠達が来た時に、帰りに一緒に連れて行かれたんだ」
珠樹は俯き、両手を膝の上でギュッと握っている。
僅かに体が震えている。
何とかして妹の誤解を解きたかった。
昔のように側にずっと一緒にいたかった。
笑って欲しかった。
こんな顔を、疑いをさせたいわけじゃない。
ただ……会って。
名前を呼んで欲しかった。