誠-巡る時、幕末の鐘-
彼方の方に向き直り、きちんと姿勢を正した。
「兄様。まずは兄様がどちら側かということを教えて下さい」
奏の表情は固く険しいものになる。
珠樹が彼方を睨みつけた。
まるで答えはもう知っていると言わんばかりに。
その珠樹の顔を見て、奏は悟った。
あぁ、もう……あの頃には二度と戻れない、と。
「……僕は…風戸側だよ」
分かっていても…悟っていても…。
信じたくなくて、夢ならばいいと…。
悪い夢を見ているんだと、思いたくて……。
現実は……夢にはならない。