誠-巡る時、幕末の鐘-



遡ること半刻前……




「お前達にやってもらいたいことがあるんだ」




鈴が今までの笑顔を引っ込め、真剣な声を出した。




「何だよ」


「風戸の古狸共を一掃する。力を貸せ」




口から煙を出し、紫翠が煙管の火種をポンっと落とした。




「古狸?何だそりゃ」


「年長者達だ」


「安心しろ。ろくでもないことばかりやってる奴等しかいない」




鈴が肩を竦めて付け足した。




「何させるつもりだ?」


「風戸の里の中で一騒ぎ起こしてくれればいい。その間に俺達が叩く」


「滅茶苦茶にしても?」


「できるものならな」




沖田の挑戦的な目に、紫翠も余裕の一言を返した。




「近藤さん達は屯所に残ってくれ。俺達がいねぇことを攘夷志士が聞き付けてくるかもしれねぇ」


「だが、しかし……」




土方の言葉に近藤は渋い顔をした。


自分とて奏を連れ戻しに行きたい。




「分かった。雷焔君を頼んだぞ」




だが局長として守るべきものは、壬生にもあった。


奏を土方達に託し、屯所で皆の帰りを待つために戻っていった。



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