誠-巡る時、幕末の鐘-
……ということがあって現在に至る。
「もうすぐだ。へばるなよ?」
「へばっても骨ぐらいは奏に届けてやろうか?」
「へばるかよ!!」
「これくらいでへばるようじゃ、男として失格だぜ!!」
反論はするものの、早く着かないかと思うのは事実だった。
かれこれ半刻[1時間]は走り続けている。
しかもムカつくことに、紫翠と鈴はあまり息切れをしていなかった。
「おい、まだなのか?」
「後ちょっとだ。この山道を登った所だ」
目の前には山に入るための細い道がある。
みんなはそこを駆け抜けた。
「何か里の様子がおかしくないか?」
最初に異変に気付いたのは鈴だった。
騒然としていて、いつもの閑(ノド)かさが掻き消えている。
「何があってるんだ?」
「知らん。急げ」
走る速さを早め、風戸の里内部に入っていった。