誠-巡る時、幕末の鐘-
土方達が屋敷に入った時、中はもっと悲惨なことになっていた。
障子や襖は外れ、畳には血が大量についている。
調度品なども滅茶苦茶になっていた。
そして離れに奏はいた。
「奏!!僕だよ!!」
土方達は目を疑った。
奏が珠樹と刀を交えていたのだ。
「どういうことだ?」
「奏ちゃんと彼は兄妹じゃなかったの?」
「奏は今、我を忘れているんだよ」
横から聞き慣れぬ声がした。
刀を一斉に抜くと、その必要はなかったことに気付いた。
その声の主、彼方は襖にもたれて、大量に血を肩から流していた。
「お前、何者だ?」
「二人の……兄、だった」
歯切れの悪い言葉に眉を潜めた。
「ここは人間が来ていい場所じゃないよ。特に今はね。死にたくなかったら帰るといい」
彼方は刀を構え直し、ふらつきながらも立ち上がった。
まだ血は大量に流れている。
おそらくは人間ではもう死んでいるか、刀を持てないだろう。
鬼であるから為せることだ。
彼方は奏から視線を外さなかった。