誠-巡る時、幕末の鐘-



「何してるの?早く運んで」




彼方はこちらを一瞬見て、また再び視線を前に向けた。




「ほら、とにかく行くぞ!!」


「奏……」




珠樹は両脇を永倉と原田に支えられて離れから出ていった。


目は最後まで奏を見ていた。




「……っつ!!」




奏の刀が彼方の肩の怪我をさらに広げた。


苦痛に顔を歪め、息も乱れてきている。


ふいに奏が彼方から距離をとった。


おもむろに刀を鞘に戻すと、柏手を打った。




「謹請し奉る……」


「ここからすぐに出るよ!!」




奏が何かの言葉を呟き始めると、彼方も刀を納める間もなく土方達に叫んだ。




「雷神招来!!」




ドッシャーンッ!!!




間一髪で土方達が出た瞬間に、凄まじい音を立てて雷が落ちた。


離れがあった場所は奏を中心にして丸い大きな穴になってしまっている。


雷焔家直系のみ使用できる、雷神の召喚の術式を使ったのだ。


辺りには焦げ臭い匂いが漂っている。



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