誠-巡る時、幕末の鐘-



「………」




奏はゆっくりこちらを見た。


衣は彼方や珠樹、そしてここまで来る時に倒れていたたくさんの者達の血で赤く染まっている。


再び刀を鞘からスッと引き抜いた。


奏は目に見えない速さで彼方の前に跳躍すると、袈裟懸けに刀を振り下ろした。




「………っ!!!」




続けざまの攻撃に、さすがの彼方も為す術がなかった。


そのまま前に倒れ込み、微動だにしなくなった。




「おい!!大丈夫か!!?」


「奏……。もうよせ」




斎藤の言葉も……今の奏には届いていない。


あろうことか、土方達にまで刃を向けてきた。




「……奏!!!目を覚ませ!!」


「奏ちゃん、おいたが過ぎるよ?」




なんとか防ぐものの、相手は鬼。


次第に押し負けてきた。




「奏ちゃん、いい加減に……」


『しろよ!!』




土方、沖田、斎藤、藤堂が一斉に飛びかかった。




「奏!!俺達にまで刀を向けるのは間違ってるだろ!!」


「早く正気に戻れ!!」




奏は四人から次々に繰り出される剣先を器用に避けている。



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