誠-巡る時、幕末の鐘-



その時、低くしわがれた声が響いた。




「こ、これは一体!!」


「あそこにおるのは彼方様ではないか!?」


「し、死んでいるのか!!?」




今まで姿を現さなかった風戸の年長者達だった。


みんな顔を青くしている。


当主の屋敷の離れに雷が落ちたために、出て来ざるをえなかったのだろう。




「………」




それを見た奏の瞳は苛烈なものに変わった。


動きが格段に良くなり、鬼気迫る勢いで攻撃を繰り出してくるようになった。


沖田を逆袈裟に斬り、そのまま勢いを殺さずに藤堂の脇を斬りつけた。




「あっ、くっ!!」


「……っ!!」


「総司!!平助!!」




倒れこむ二人に続いて土方の腹に回し蹴りをし、斎藤の方へ飛ばした。


二人の姿が外に生えていた木にぶつかるのを見届けた後、刀を構え直し、跳躍した。


目標は年長者達だ。




だが、その刀が新しい血を吸うことはなかった。




「………そこまでだ」



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