誠-巡る時、幕末の鐘-
地面には大きな穴が開いており、たくさんの血の匂いがする。
ふと、目を向けた先には彼方がうつ伏せに倒れている。
自分の服を見下ろすと、山吹色の小袖に点々と赤い血がついている。
「私……」
カラン
奏は手から刀を落とし、崩れ落ちた。
ミエ達もゆっくりと刀を下ろした。
「た、助かった」
長く伸ばした髭をせわしなく撫でながら、一人の年長者が言った。
残りの二人も、まだ顔が強ばっているものの、その言葉に同調して頷いている。
「詳しく聞かせてもらおうか。ここまでこいつを激情に走らせた理由を」
「もともと君達風戸には嫌疑がかけられているからね」
第四課長、第五課長の言葉に三人共顔色を失った。
「フェル。彼らの手当てを」
ミエが彼方や土方達の方をチラリと見て、少年に呼びかけた。
「分かってるよ。……星鈴」
名を呼ばれた奏が肩を軽く揺らした。
そろそろと顔を上げ、フェルを見る。
その瞳には、深い後悔と懺悔が映し出されていた。
「……はい。フェルナンド様」
それでも、直属の上司である少年の言葉は無視できないものだった。