誠-巡る時、幕末の鐘-



「奏……」




奏は土方の視線から逃げるように立ち上がった。




「私、他の者にも手当てをしてこなくちゃ」




そう言うと、そのままどこかへ立ち去ってしまった。


土方達は見ることが出来なかったが、奏は一つの決心をした表情を浮かべていた。




「奏……」


「ちょっと」




振り向くと、ミエが立っている。




「奏を連れて先に帰って。私達にはやることが残ってるから」


「だが、奏は他の者の手当てをしてくるとどこかに行ってしまった」




斎藤の言葉にミエは目を細めた。




「あの子はあなた達から逃げただけ。……本当に大切な仲間だとまだ思っているならちゃんと見てなさい」




その手から滑り抜けていくわよ、と意味深なことを言い残し、立ち去った。




「……奏を探すぞ」


「新ぱっつぁんと左之さんも見つけなきゃいけないしな」




回復した藤堂が、ここにはいない二人を思い出して言った。


血が流れたために、まだ若干顔が青い沖田と藤堂を気遣いながら、四人はその場を後にした。



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