誠-巡る時、幕末の鐘-
「珠樹!!新八さん!!左之さん!!」
奏は風戸の里中を駆け回った。
応援を呼んだのは本当らしく、もうすでに見知った顔ぶれが揃っている。
だが、三人の姿はどこにも見当たらない。
「そんな……三人共、私が…」
奏の中に、ある一文字が浮かぶ。
同時に、今まで見送ってきた人間達の姿も浮かんできた。
次第に冷たくなる手、届かなくなる声、もう開かれることがない瞳。
「いや…そんなの……絶対」
唇を噛みしめ、拳を握る。
走る速さも格段に増した。
『奏!!』
後ろから自分を呼ぶ声がし、素早く振り向いた。
「奏、お前…正気に戻ったんだな!?」
「新八さん」
「土方さん達はどうしたんだ?」
「左之さん」
奏は二人の元へ走っていき、両腕を広げて抱きしめた。
「良かった……二人が無事で」
永倉と原田は目を丸くし、顔を見合せた後、奏の頭を撫でくり回した。
「珠樹なら向こうで手当てしてもらってるぜ。行くか?」
「……うん」
奏は一瞬躊躇したが、行かないという選択肢はなかった。