誠-巡る時、幕末の鐘-
「珠樹…ごめんね?」
それは何に対しての謝りなのか。
記憶を失っていたことか、傷つけたことか、それとも……これからしようとしていることか。
「謝らなくていいよ」
珠樹は知らない。
知っているのはただ三人。
「奏、ほら行こう。もう大丈夫だから」
珠樹は起き上がろうと布団に手をかけた。
「まだ駄目だよ。起き上がっちゃ」
奏は慌てて止めた。
「大丈夫だってば」
「駄目だってば」
さすが双子。
大丈夫だと言い張る姿は、そっくりである。
奏は自分もこうなのかと、少しだけ反省した。
その間にも、珠樹は布団を抜け出し、着物を整えている。
隙間から、奏がつけたのだろう傷が見え隠れしている。
「珠樹、ちょっと待って」
奏は手を傷の上にかざした。
すると、沖田達の時と同じように光が現れ、傷を跡形もなく消し去った。
珠樹はそれを見て、一瞬目を見開いた後、険しい顔をした。