誠-巡る時、幕末の鐘-
「奏。これ、もう二度とやらないで」
「どうして?」
曖昧な笑顔を浮かべ、小首を傾げた。
対する珠樹は初めて奏に対して怒りの表情を見せた。
「これ禁術だよね?知らないと思った?」
「禁術?そんなの使えないよ」
「嘘つかないで!!これは相手の傷を自分の命を削って治す術でしょ!?」
珠樹は奏の両肩を強く掴んだ。
奏は何も言わない。
その沈黙は、珠樹の言葉を肯定している以外のなにものでもなかった。
「もうしないで。僕以外にもやったの?」
「…………してないよ」
奏はフワリと笑った。
だが、珠樹はその言葉が嘘だと悟った。
「奏……「奏、ここにいたのか」
土方達が部屋に入ってきた。
珠樹は沖田と藤堂を見て、自分の考えが正しかったことが確認できた。
二人の着物は明らかに斬られた後のように破れているのに、全く傷がない。
初めて自分につかれた嘘は、とても切ないものだった。
「奏ちゃん、帰るよ」
「……うん」
奏が足を踏み出そうとした時、後ろから手を強く掴まれた。