誠-巡る時、幕末の鐘-

迷いは闇夜と共に生ず




―――屯所




「帰ったか!!みんな無事だな!!?」


「あぁ。大丈夫だ」


「お帰りなさい」




山南の言葉に、みんな口々に返したが、奏だけは曖昧に笑うだけだった。


珠樹に至ってはそれを無表情で眺めている。




「ん?この少年は……」


「初めまして」




近藤や他の視線に気付き、珠樹は素っ気なく言った。




「私の双子の兄の珠樹です。それよりも」




奏は補足をすると、沖田と藤堂に向き直った。


二人は不思議そうにしている。




「二人はこれからまだ治療が残っています。体内の血液量を戻さないと」


「奏。また術を使うつもり?」




珠樹の目が剣呑に煌めいた。


そんなことさせない、としっかりと腕を握って離さない。




「血なんて勝手にできるんだから、そんなことしなくたって平気だよ」


「あぁ。奏だって疲れてんだろ?」




沖田と藤堂もその必要はないと首を振った。


奏の瞳が一瞬揺れたのを、珠樹は見逃さなかった。



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