誠-巡る時、幕末の鐘-



「総司と平助はどこか怪我をしたのか?」




松原が二人の全身を眺めながら心配そうに言った。


傷は跡形もなく消えているのだから無理もない。




「そうなのか?」


「まだどこか悪いようなら松本先生を呼びましょうか?」




近藤と山南も表情を曇らせた。




「もう何ともありませんよ。奏ちゃんが治してくれましたから」


「そうか。奏君、ありがとう」




沖田から聞いて一安心し、近藤は奏の頭をポンポンと叩いた。


奏はいつもなら嬉しそうに笑うのに、今は悲しげに笑うだけだった。




「近藤さん、私は珠樹の具合も見ないといけないのでこれで失礼しますね」


「あぁ。兄妹水入らずでゆっくりするといい」


「夕食はどうしますか?」


「いえ、いりません」




奏は軽く首を振って、そのまま珠樹と部屋に歩いていった。



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