誠-巡る時、幕末の鐘-
―――半刻後
夜になり、辺りはすっかり暗闇に包まれている。
「……奏、どこ行くの?」
「ちょっとお手洗い。すぐ戻ってくるから」
部屋を出ようとした奏に、背後から声がかかった。
それに答えて、障子を開け、部屋を出ていった。
「………みんな……ごめんね」
左手で刀印を作り、口元に運ぶと術を唱え始めた。
長い術の詠唱が終わるころには、外の蛙の鳴き声しか聞こえなくなっていた。
奏がみんなを眠らせたのだ。
前回、隊士達を眠らせた術の応用で、より強力なものになっている。
「明日の朝には普通に目が覚めるから」
広間で食事をとっていたらしい。
奏が広間に入ると、みんな集合していた。
「ありがとう」
「奏、どういうこと?」
奏が一人一人の顔を眺めていると、入り口の方から訝しげに声がかけられた。
「珠樹……部屋に戻ろう」
「ここを出ていくつもり?」
「………うん。だから珠樹も準備手伝って」
「いいよ」
珠樹は探るような声音だったが、黙って奏の後について行った。