誠-巡る時、幕末の鐘-
「お前も相変わらず馬鹿だな」
奏はムスッとして、半眼になった。
「馬鹿ではありません」
「お前のような馬鹿は見たことがない。何故大切にした者をおいて死に急ぐ?」
篁の言葉は今までと調子は変わらないが、言葉の中に鋭い刺があった。
それが決心を固めた奏の心に次々と刺さる。
いつの間にか目的地に着いていた。
神々しい神気が、二人の前に降り立つ。
「お前達か。珍しい組み合わせだな」
貴船の祭神は口の端を吊り上げて笑った。
「酒を献上しようかと」
「私は……暇ごいに」
奏の言葉に祭神は目を一層細めた。
「人も鬼も変わらぬな。考えることが理解に苦しむ」
祭神はやはり、全てを見通せるらしい。
「ミエはこの事を知っているのか?」
「いいえ。ご存知ありません」
奏は目を伏せ、祭神の問いに答えた。
知らなくていい。
あの人は何も……。
これが私の罪の償いの仕方だから。