誠-巡る時、幕末の鐘-



―――屯所




「おい、起きろ」




唐突に響いたその声と、鋭い柏手の音にみんなは覚醒した。




「あれ?俺達何で寝てたんだ?」


「酒飲みながら寝ちまったのか?」


「お前ら馬鹿か?」




みんなは一斉に一ヶ所を見た。


そこには、漆黒の衣を纏った男が腕を組んで、柱に寄りかかっていた。




「お前は確か……」


「冥府の官吏の小野篁様ですか?」




山南の問いに、篁は斜めに見下ろすだけだった。




「何故俺がここにいるのだと思う?」




逆に質問を投げかけた。




『………!!!』


「奏!!」




奏の部屋を目指して一斉に走り始めた。


自分達と篁の繋がりなどない。


あるのは……奏ただ一人。


みんなが奏の部屋に到着し、障子を開けた先にいるのは……珠樹だけだった。



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