誠-巡る時、幕末の鐘-
「鬼はそんなにやわじゃないよ」
「いいや、信じねぇ」
「あぁ。鬼も同じように傷つく」
永倉と原田が奏の言葉を即座に否定した。
「俺達が鈴と一緒に治療所に行ったとき、たくさんの鬼達が運ばれてきたぜ?」
「あれを見て、どうやってお前のその言葉を信じろと?」
二人もいつもの表情ではなく、難しい話をしている時の剣呑な表情に変わっている。
「俺達はお前を見捨てたりしないし、もちろんおいていったりもしない。どうだ?お前の本心を言ってみろ」
土方に言われて、そろそろとみんなの顔を見回す。
そして、土方の方を見て一言。
「私は……みんなと一緒にいたい!!」
奏の心の奥底に追いやられた本心が漏れた。
その言葉に顔を歪めた珠樹以外は、みんないつもの表情に戻った。
山南も笑顔を浮かべている。