誠-巡る時、幕末の鐘-
「頬を見せてください。腫れてませんか?」
山南は眉を下げて、奏の頬を優しく撫でた。
「大丈夫です。お陰で目が覚めました。ありがとうございます、山南さん」
奏の一点の曇りもない笑顔が向けられた。
山南もそれを見て、安心したように笑顔を返した。
「……もういいでしょ?奏はたくさん術を使い過ぎたんだから休ませたいんだけど」
珠樹の不機嫌さを隠さない言葉が、この感動の雰囲気を壊した。
「そうだな」
「また熱出しちまうかもしれねぇし」
「ゆっくり休みなさい」
「はい。お休みなさい」
みんなは奏の部屋から順々に声をかけながら出ていった。
部屋に残ったのは珠樹と奏だけ。