誠-巡る時、幕末の鐘-
「姉上に聞いたのです。確かに、彼方様は間者だったが、自分達を殺したのは違う者だと」
「僕は二人を殺した奴を斬ったんだよ。そこに奏が来たわけ」
奏はまた目の前が暗くなりそうだった。
「じゃあ、兄様は父様と母様の仇を討ってくれたの?」
「そういうことになるかな?」
彼方は言葉を濁した。
「……ごめんなさい。勘違いして。怪我大丈夫?」
「治療してもらったから平気だよ。まだ熱は帯びてるけどね?」
奏は俯いてしまった。
「そんな風にしないで。誤解が解けたならそれでいいから」
奏はコクリと頷いた。
「僕は紫翠達に報告があるから帰るよ」
また来るね、と言い残し去っていった。
「爺。雷焔の里を滅ぼしたのは風戸の年長者達だった。他は関与してなかったよ」
「…そうですか」
爺も初耳だったらしい。
「本当だぜ。紫翠達はそいつらを倒そうと俺達に協力しろと言ってきた」
「あいつらが……」
爺は黙って空を眺めた。