誠-巡る時、幕末の鐘-
「私ね、風戸の里を半壊しちゃったんだ。罪のない人を大勢傷つけた」
奏が自分の手を眺めながら言った。
「奏様……」
「私、謝りに行かなくちゃね」
力なく笑う奏に、爺も同じように返した。
「年長者達三人は元老院幹部によって粛正されたよ。それでね、輝耀は……」
「知っています」
今度は奏が驚く番だった。
「ですからもう粛正されたならいいのです」
爺は吹っ切れた顔をしていた。
長年の風戸への恨みがなくなった。
むしろ、その恨みそのものが誤りであった。
「奏、あの、話が……」
一人だけ分からないと途方に暮れている響に、奏はフワリと微笑んだ。
「間違いだったのよ、全て。もう恨みあいはおしまい」
奏が嬉しそうに笑うので、響もそれ以上聞く必要はないと思った。