誠-巡る時、幕末の鐘-
珠樹はずっと長い間奏のことを想ってきた。
幼い頃は、兄妹の情だったとしてもだ。
こんなポッと出の人間に負けるわけにはいかなかった。
「僕とお前が似ているだって?どこが?」
「育った環境がだよ。まぁ、僕は近藤さんの所でお世話になって良かったけど」
君はどうなの?と言わんばかりの目を珠樹に向けた。
「……お前に言う必要はないね。もう寝るから」
珠樹が障子に手をかけた。
「そうそう。良かったね?あの食事が最後にならなくて。本当だったらお前達みんな殺して連れていく所だったけど」
珠樹が奏そっくりの笑顔で振り向いた。