誠-巡る時、幕末の鐘-



―――七月某日




「暑い〜。死ぬ〜。風よ吹け〜。雨よ降れ〜。」




壬生浪士組の屯所の庭では、奏が怪しい踊りを踊っていた。




「奏。そんな日の当たるとこにいるから余計暑いんだよ」


「だって〜。なんで雨降らないの〜?」



珠樹はこっちにおいでよ、と手招いた。




貴船の龍神様の所に祈雨にいこうかな〜。


暑い〜。




奏は部屋で扇子をあおぎ始めた。




「珠樹〜。やっぱり珠樹も一緒にやろうよ」


「え………」




いかに奏命の珠樹でも、今目にしていた踊りに参加するのは難しいことだった。


誰から習ったそんな踊り、と問い詰めたくなるようなものだ。


言っている台詞から雨乞いの儀のようだが、全く効果はない。


かんかん照りのまま、雲一つない快晴だ。


梅雨の時期には晴れ間が嬉しいものだったが、こうも晴れが続くと雨も恋しくなるというものだ。


ここ最近、全く雨が降っていない。



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