誠-巡る時、幕末の鐘-



「奏ちゃん?気持ち悪いこと言わないでくれる?」




沖田が足音も立てずに、奏の背後に迫っていた。




「あ〜、沖田さん。聞いてたんですか?」


「うん。奏ちゃん、そんなに暑いなら脱げばいいじゃない」


「は!!?何言ってやがる、総司!!」


「ふざけてんの?」




土方からは怒号が、珠樹からは殺気が沖田に向かって飛んだ。


だが沖田は二人の発言を無視し、奏の肩に手をかけた。




「でも、みんなには見せたくないから僕の部屋に行こうか」


「沖田、お前……」




沖田と珠樹の間に激しい火花が散っている。


土方は、珠樹が屯所に来てからよく見られるようになったこの光景に、またか、と深い溜め息をついていた。



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