誠-巡る時、幕末の鐘-
「幽霊ごときが怖いの?」
「はんっ、怖かねぇよ」
珠樹が目を細めて土方に尋ねた。
珠樹は同じ邸内にいるので、四六時中奏と一緒にいるわけではなくなった。
まぁ、本当の理由はあまり奏にくっつき過ぎていたので、奏から少し離れるよう言われてしまったのだ。
「そう?怖い話をする時は寄ってくるから気を付けてね」
そう言うと、珠樹も部屋を後にした。
「なんだ、あいつ!!俺を馬鹿にした目で見やがって」
土方は大層ご立腹のようだ。
「土方さんっておちょくると面白いんですよね」
「お前もかぁ!!そこに直れ!!」
「はぁ…またですか。嫌ですよ、お説教長いんだし」
沖田がしみじみと言うもんだから、土方の中で何かが切れた。
土方と沖田のいつもの鬼ごっこが始まってしまった。
近藤はそれを、またか、と苦笑混じりに眺めていた。