誠-巡る時、幕末の鐘-
「今は今夜の怪談大会の準備で忙しいんです」
「ふん。怪談大会なんぞしていたら本物が出てくるぞ?」
芹沢が挑戦的な目で奏を見た。
完全に幽霊を怖がる子供扱いを受けている。
「望む所です!!逆に退治してみせますよ!!」
奏は拳を上げ、握りしめた。
「ほぅ、勇ましいことだ。さすがは雷焔だな。後で困ったことにならないようにしろよ?」
芹沢は屯所の門の方へ出ていった。
「芹沢さん……もしかして私の正体に気付いてる?」
何度かその兆候が今まであっただけに、その考えを拭いされない。
奏の正体を知っているのは、近藤派の者達だけだ。
「芹沢さんって、お酒飲んでいなかったら凄い人なのになぁ」
奏の呟きを聞いていたのは、廊下の角で隠れていた珠樹と沖田だけだった。