誠-巡る時、幕末の鐘-
「昔、外国に一人の男がいたんだ。
その男は独身で、一人で暮らしていた。
ある日の夜、玄関を叩く音がしたから家の外に出てみると、男の子が一人立っていた。
その子は、その男のことをお父さんと呼んだんだ。
自分は独り身のはずなのにおかしいと思ったが、辺りが暗くなってきたから泊めてやることにしたんだ。
男の子にご飯を与え、風呂にも入れてやると、布団に寝かしてやった。
しばらくすると、寝息が聞こえてきたので、男も眠くなって一緒に寝たんだ。
夜中に息苦しくなって、目を開けると、そこには男の子が自分に馬乗りになって首を絞めていたんだ。
驚いた男は無我夢中で払いのけると、急いで外に逃げようとした。
だけど何故か扉はびくともしないで、男は焦った。
そして、耳元で男の子の声が響いたんだ。
「お母さんが待ってるよ。お父さん」
男の子の後ろに、本来あるべき影はなかった」