誠-巡る時、幕末の鐘-
「さっきから襖の前で襖を叩いていたぞ??」
「……」
男の子だった。
走り寄ってこられて抱きつかれた響は、すうっと気絶してしまった。
「響ーっ!!!しっかりして!!」
「おい、平助!!なんつう話をしてやがる!!」
「え!!?やっぱり俺のせい!?」
「響、気を確かに持て」
爺は急いで響を男の子から引き剥がした。
「何だ何だ??全く話が読めないんだが」
「また新しい余興でも見つけたのか??」
慌ただしい中に、風戸主従の周りにだけはのんびりとした空気が流れていた。
「君は誰??」
沖田が普段子供に対する声音より若干低くして尋ねた。
「僕??僕は……千早(チハヤ)だよ」
「千早??」
「うん、そう」
響から引き剥がされたにも関わらず、ニコニコと答えた。
「僕、まだきちんとなりきれてないんだ。だからここに置いてくれない??」
千早と名乗った少年は懇願するように近藤の前に座った。
やけに人を見る目がある気がするが。