誠-巡る時、幕末の鐘-
事の前触れ
―――数日後
奏は部屋の中でゴロゴロとしていた。
千早は今、響に連れられて爺の家に行っている。
奏達鬼にはこの屯所から出ても千早の姿がきちんと見えるのだ。
「暑い〜」
恨めしげに空を見ても何も変わらないが、どうしてもそうすることをやめられない。
バタバタバタ
廊下を凄い勢いで数人の隊士達が走っていった。
最後に来た者の足を掴み、無理矢理止まらせた。
「あいたっ!!!」
………というより転ばせた。
「どうしたの?」
先程の様子からしてあまりよくない事なのは確かだ。
「せ、芹沢局長が商家に火を!!」
「何だって?」
奏の目がすうっと細められた。
次の瞬間、今までの行動からは想像できない速さで近藤の元に急いだ。
奏が近藤の元に行くと、すでに中で土方の声がしている。
「近藤さん、雷焔です。入りますよ?」
「あぁ」
素早く挨拶を述べると、固い声音が帰ってきた。