誠-巡る時、幕末の鐘-
奏が中に入ると土方と山南もいた。
「近藤さん、これは面倒な事になると思うぜ?」
「とにかく、その商家に行かなければ」
「あぁ、そうだな。まずはそれからだ」
奏は黙って三人の話を聞いていた。
「雷焔君、みんなにすぐ出るように伝えてくれないか?」
「分かりました」
「よろしく頼むよ」
山南から指示を受け、奏は立ち上がって障子に手をかけた。
そのままみんながいるだろう所へ走っていった。
「何だって!?」
「芹沢さんが!?」
「またかよ……」
最後に見つけた永倉達三人に手早く事情を話した。
一ヶ月も経たないうちに、もう大きな事件を三件も起こしている。
天を仰いでいる原田の気持ちにもなるだろう。
「山南さんが、みんなその商家に行くようにって」
「でもみんな出ちまったら屯所は大丈夫なのかよ」
「大丈夫よ。だって珠樹が残るんだもの」
藤堂の言葉に奏は自身満々に答えた。
雷焔家の現当主が、人間には遅れをとるはずがない。