誠-巡る時、幕末の鐘-
「何がいいの?」
「ん〜。決めとくよ」
珠樹はニッコリと笑う。
「さて……私も、もちっと情報集めて来よっと」
「あぁ、待って。僕も行くから」
「駄目駄目。珠樹は長としての仕事があるんだから。ご褒美無しだよ?」
「え…」
珠樹は黙った。
奏はご褒美の意味は全く分かっていないだろう。
「……すぐ帰ってきてね」
「もちろん!!」
奏は愛刀を腰に差し、部屋を出ていった。
奏の気配が遠ざかると、珠樹は大きく息を吸った。
「はぁーーー」
珠樹は吸った息を全部吐き出した。
自分の想いが間違ったものだとはわかっている。
だが、だからといって誰かに渡すのは絶対に嫌だ。
「特に沖田や兄上にはね」
苦々しく言い放った。
誰も聞くことがない呟きをこぼし、また書類に向かった。