誠-巡る時、幕末の鐘-
「……いいわ。一つだけ教えてあげる」
「本当か!?」
「えぇ。……あなたの先祖には借りがあるからね」
「私の先祖に?」
奏は苦虫をすりつぶしたような顔になった。
平安の頃、嵯峨帝……神野にね。
バキッ
奏は拳を固め、近くにあった調度品を粉砕してしまった。
「……私としたことが…忌々しいことを思い出したばかりに。ごめんなさいね」
「い、いや」
男は自分の先祖が何をしたのかとっても気になったが、黙っていることにした。
正しい選択だ。
「ふぅ……いい?」
奏は人差し指を立てて、男の顔の前に出した。
「あんたは虫のいいことに、攘夷はしたいけど、過激派が台頭するのは嫌だ。そうでしょ?」
「ま、まぁ。ありていに言えばそうなる」
たじろぎながらも男は頷いた。
「だったら話は簡単よ。長州に力を貸している公家を京都から出せばいい」
「公家を?どうして?」
奏は立ち上がった。
もう退出するつもりなんだろう。
身支度を整えている。