誠-巡る時、幕末の鐘-



―――早朝




「いってらっしゃ〜い」




奏は眠そうに目をこすっている。


みんなはもうすでに出陣の用意をすませていた。


御所の門を守るように指示が出たのだ。




「おめぇも行くんだよ!!」


「えぇーっ!!」




奏は大げさに驚いてみせた。




「私ここでいい子にお留守番してる」


「どの口がいい子だってぇ!?」


「この口」




奏は自分の口を指差した。


どんなに眠くても土方への口答えは忘れない。


土方の中で何かが一本切れた。




「……いいから、とっとと行くぞ」


「珠樹は?」


「僕はお留守番」




奏は目を見開いた。


そしてガバッと土方の方を向く。




「な、なんだよ」


「珠樹も行かないなら、私は行かない」


「おめぇは隊士だろうが!!」


「誰かに仕組まれた陰謀だったよね」


「誰かって誰だろうね」




奏は沖田の方をジーっと見た。


沖田は沖田でその視線をニコニコと返す。


まだ動こうとしない奏に土方の中の何かの糸が、まとめてブチブチっと切れた。



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