誠-巡る時、幕末の鐘-
―――とある宿屋
辺りがすっかり暗くなった時間。
月明かりだけで話す者達がいた。
「公卿達が京都を追われたぞ」
「あぁ、そうらしいな。俺はまだ京都に残るがお前はどうする??」
二人の男が何やら密談している。
「俺も残るつもりだ。壬生浪士組に間者を送ってあるからな」
「壬生浪か。大丈夫なのか??」
「心配はいらん。気付かれてはないようだからな」
「狼は鼻がきく。用心するように言えよ」
男は煙管を取り出して、火をつけた。
「幕府が朝廷の実権を握ったか」
「薩摩と会津の考えらしい。久坂がそう言っていた」
「そうか」
男はスウ〜と煙をはいた。
「次の手を考えなければな。上役達も頭が痛いだろうな」
「あぁ。……お前、煙管も大概にしろよ??」
男は眉をひそめて、煙をはらった。
「分かってるよ。そのうちな」
「お前のそれは信用ならん」
「怖い怖い」
男がひょいと肩をすくめた。
二人は気心しれた仲なので、こう軽口も叩きあえるのだ。