誠-巡る時、幕末の鐘-
消えた甘味の行方
―――屯所
「はぁ〜」
あの政変から数日が経ったある日の午後。
奏は縁側で溜め息をついていた。
「疲れた。……帰りたい」
「今度はどうしたんだい??」
顔を上げると、井上だった。
優しげな笑顔を浮かべている。
奏はこの笑顔が大好きだった。
井上はみんなに慕われている。
こうして気配りができるからだろう。
「源さん……もう疲れた」
「何にだい??」
奏が深刻そうに言うので、何事かと構えた。
「う〜ん。全て??」
「それは深刻だね」
「聞いて下さい。実は…」
奏は昨日起きた出来事をゆっくりと話し始めた。