誠-巡る時、幕末の鐘-
なんとか逃げ切った奏は道場に来ていた。
道場では、斎藤が隊士に稽古をつけていた。
「一君、沖田さん知らない??」
「奏か。いや、知らない。子供達と遊んでいるんじゃないのか??」
なるほど。
沖田さんなら大いにありえる。
「そっか!!……あ、ねぇ、一君」
奏は出ていこうとした足を止めて振り返った。
「何だ??」
「私が台所の戸棚に直してたお菓子知らない??」
斎藤は顎に手を当てて考え込み始めた。
「いや、知らない。どんなのだ??」
「桜花も食べれるようにと思って、煮干しを甘く煮たやつ」
結構な量を作っていたはずだが、一つもないのだ。
「俺は知らないな」
「そっか、ごめんね。稽古中に」
奏は土方がいないかどうか確かめてから外に出ていった。
斎藤はその奏の挙動不審な行動を見て、不思議そうに首を傾げた。
「何をしてるんだ??」
しかし、すぐに気を取り直し、隊士の稽古に戻っていった。