誠-巡る時、幕末の鐘-



―――壬生寺




「雷焔君、どうしたんだ??そんなにキョロキョロして」




壬生寺には、松原一人だけだった。


素振りをしていたらしい。


汗が顔をつたっている。




「松原さん、沖田さんを知りませんか??ここで子供達と遊んでいると思ったんですけど」


「いや、今日は巡察の当番だぞ??」


「あぁ、そっか!!ありがとうございます!!」




すっかり巡察のことを忘れていた。




沖田さんもきちんと仕事してたんだなぁ〜。




失礼な考えだ。


少なくとも元老院のどこかの課長よりかは真面目にしている。


……はず。




「もうすぐ帰ってくる頃だろう。探しているなら門のところで待っているといい」


「はい!!そうします」




松原さんはいい人だなぁ、と戻りかけて足を止めた。




「あと一ついいですか??」


「ん??」




奏は首だけ後ろに曲げた。




「台所の戸棚に直してた煮干し知りませんか??」


「いや、知らないぞ??」


「そうですか、ありがとうございました」


「あぁ」




奏は門の所へ駆けていった。


何故煮干し??と松原は首を傾げていた。



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